遺言と異なる遺産分割協議 | 遺産分割協議の無効③
今回は、前回の「遺産分割協議の無効②」の続き及び遺言と異なる遺産分割協議に関することを記載したいと思います。
成立した遺産分割協議が無効になる場合としては、以下のような場合があります。
・錯誤
・相続人全員で行われていない場合
・相続人でない者を加えてなされた場合
・重要な相続財産が漏れてなされた場合
・遺産分割協議後に遺言書が発見された場合
① 相続財産のすべてが遺贈されていた場合は、遺産分割対象となる相続財産が存在しないこととなるため無効となります。
② 特定遺贈がなされていた場合は、遺贈の対象となっている財産は遺産分割対象とならないため、当該財産に関する箇所において無効となります。また、当該財産の遺産に占める割合や重要性などから遺産分割協議全体が無効となる可能性もあります。
③ 遺言により各相続人が取得する相続分の指定がなされている場合において、この遺言のあることを相続人が知っていれば、成立した遺産分割協議の内容と異なっていたであろうと考えられる場合は無効となります。
④ 相続人でない者に対して、包括遺贈がなされている場合は、「相続人全員で行われていない場合」に該当するため無効となります。
⑤ 遺言による認知や推定相続人の廃除が行われていた場合は、「相続人でない者を加えてなされた場合」の内容に従うことになります。
原則としては、遺言の内容が優先されることになりますが、相続人及び受遺者全員が遺言の内容を知っており、この内容と異なる遺産分割協議を行うことに同意しているのであれば可能です。
ただし、遺言者が遺言と異なる遺産分割を禁止している場合は遺産分割協議を行うことは出来ません。
また、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者は相続人全員の同意により遺言と異なる遺産分割協議への同意を相続人から求められても、遺言に基づいた執行をすることが出来ることになります。
そして、遺言執行者がいるにも関わらず、相続人が遺言と異なる遺産分割協議を行った場合、当該遺産分割協議は無効とする裁判例もあります。
さらに、遺言執行者は遺言と異なる遺産分割協議の同意を相続人から求められた場合に、これに同意することが出来るのかという問題がありますが、遺言執行者は相続人間の争いを解決するために遺言内容を変更して執行する場合があります。
そのため、遺言執行者は遺言と異なる遺産分割協議に対し同意することが出来ると考えられ、これを認めた裁判例もあります。
▽次回は、遺産分割協議の取消し・解除に関することを記載したいと思います。