遺産分割協議の無効①
成立した遺産分割協議が無効になる場合としては、以下のような場合があります。
・錯誤
・相続人全員で行われていない場合
・相続人でない者を加えてなされた場合
・重要な相続財産が漏れてなされた場合
・遺産分割協議後に遺言書が発見された場合
遺産分割協議を行った相続人が意思表示を行うにあたり、重要な事項に関して錯誤があった場合は、民法第95条の定めにより、当該遺産分割協議は無効となります。
ただし、当該意思表示を行うにあたり、意思表示を行った者に重大な過失があった場合は、遺産分割協議の無効を主張することは出来ません。
錯誤とは、意思表示を行った者の真意と実際に表示した内容とが一致しない場合において、この一致しないことを本人自身がわからずに行った場合のことをいいます。
なお、錯誤による無効を主張出来る者は、原則としてこの意思表示を行った本人のみとなり、その他の相続人は当該錯誤をもって無効を主張することは出来ません。
例外として、意思表示を行った本人に対して債権者代位権を行使出来る者に関しては、本人に代わり遺産分割協議の錯誤無効を主張することが出来ます。
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があるため、相続人の一部を除外して行われた遺産分割協議は無効となります。また、包括遺贈により受遺者となった者や相続人から相続分の譲渡を受けた者を除外した遺産分割協議も無効となります。
ただし、遺産分割協議後に、失踪宣告により死亡したとみなされた推定相続人が生存していると判明し、失踪宣告が取り消された場合や相続開始後に認知された相続人がいる場合は、当該遺産分割協議は相続人全員で行われていないことになりますが、無効とはなりません。
失踪宣告の取消しを受けた相続人に関しては、他の相続人に対して、現に利益を受けている限度においてその返還を求めることが出来、相続開始後の認知による相続人に関しては、価額のみによる支払請求が出来ることとなります。
なお、現に利益を受けているとは、他の相続人が取得した財産が元のまま、または形を変えて残っている場合のことをいいます。浪費した金銭に関しては、その金銭を債務の弁済や生活費に費やした場合には現存利益はあるとなり、遊興費に費やした場合には現存利益はないということになります。
▽次回は、遺産分割協議の無効に関する続きを記載したいと思います。