相続と遺贈の手続きの違い – 不動産の名義変更等
通常、遺言書の内容は「○○に相続させる。」「△△に遺贈する。」等のように記載されます。
しかし、自筆証書遺言の場合は、「○○に取得させる。」「△△にあげる。」等のような記載がされている遺言書をよく見受けます。
遺言書に使用する文言自体は、法律上特に定められていないため、このような文言の遺言書も有効となります。
ただし、相続か遺贈かによって相続発生時の手続き方法が異なることになるため、あいまいな文言の場合、どちらになるのかを判断する必要があります。
不動産の名義変更に関しては、相続と判断された場合、取得する相続人が単独で名義変更を行うことが出来ますが、遺贈と判断された場合は、遺言執行者または他の相続人全員と共同して名義変更を行う必要があります。詳しくは、遺言による不動産・預貯金・株式の名義変更手続きをご覧ください。
なお、「○○に相続させる。」と記載されている場合でも、取得する者が相続人でない場合は、遺贈となります。
また、不動産の名義変更の場合において、「△△に遺贈する。」の相手が相続人の全員である場合は、以下の先例のとおり、遺贈ではなく相続を登記原因として不動産の登記申請を行うことになります。
先例:昭和38年11月20日民事甲第3119号 |
被相続人が相続人に対し相続財産の全部を包括名義で贈与する旨の遺言があるときは、その処分を受ける者が相続人の全員である場合には、その所有権移転の登記は、相続を登記原因としてなすべきである。 |
ちなみに、不動産の名義変更を行う場合に必要となる登録免許税は、当該不動産を取得する者が相続人である場合は、登記原因が相続であっても遺贈であっても相続における登録免許税である不動産評価額の1,000分の4が適用されることになります。これに対し、第三者への遺贈の場合は、不動産評価額の1,000分の20が登録免許税額となります。
▽次回は、相続分・遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止に関することを記載したいと思います。