遺言書内容の解釈 – まかせる旨の遺言
遺言書に記載されている内容の解釈に関しては、最高裁平成5年1月19日判例により以下のとおり判示されています。
「遺言の解釈に当たっては、遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが、可能な限りこれを有効となるように解釈することが右意思に沿うゆえんであり、そのためには、遺言書の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許される。」
そのため、遺言書の内容が不明確である場合においても、遺言書全体から遺言者の意思を読み取ることが出来る場合は、当該遺言書が有効であると判断される可能性があります。
なお、遺言書が複数枚に渡る場合において、ホッチキスでとめられているのみで各ページ間に契印がなく、最後の1枚にのみ署名・押印がされている場合においても、「当該数枚の遺言書が1通の遺言書として作成されたものであることが確認されるならば、その一部に日付・署名・捺印が適法になされているかぎり、右遺言書を有効と認めて差し支えない。」と裁判所は判断しています。
「財産をすべて○○にまかせる」と記載された遺言の意味に関し、東京高裁昭和61年6月18日判決において、「「まかせる」という言葉は、本来「事の処置などを他のものにゆだねて、自由にさせる。相手の思うままにさせる。」ことを意味するにすぎず、与える(自分の所有物を他人に渡して、その人の物とする。)という意味を全く含んでいないところ、本件全証拠によっても遺言者の真意が訴外人に本件土地を含むその所有の全財産を遺贈するにあったと認めるには足りない。」と判示され、遺贈とはならないと判断されています。
ただし、この判断はあくまでも当該事例の事情に基づき判断されたものであるため、個々の事情により遺言書全体から遺言者の意思が遺贈であったと読み取ることが出来る場合は、「財産をすべて○○にまかせる」の遺言が遺贈と解釈される可能性もあります。
▽次回は、共同遺言の禁止に関することを記載したいと思います。