遺言執行者の役割、職務
遺言執行者は、遺言者にかわって遺言内容を執行する者であり、法律上、相続人の代理人としての地位を有することになります。
遺言執行者は、相続財産を管理し、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、以下のような職務を行なう必要があります。
① 相続財産目録の作成
遺言執行者は、遅滞なく相続財産の目録を作成して、相続人に対し交付する必要があります。また、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、または公証人にこれを作成させなければなりません。
② 各財産の遺産相続手続き
遺言執行者は、遺言の内容に従い、各相続人または受遺者への財産引渡しのために不動産の名義変更、預貯金・株式の名義変更・解約等の遺産相続手続きを行う必要があります。
ただし、不動産の名義変更に関しては、当該不動産を相続人が相続により取得した場合は、当該不動産の名義変更に関し遺言執行者は関与することが出来ず、取得した相続人が単独で手続きを行うことになります。
なお、遺言が相続財産の一部に関してのみなされている場合は、遺言執行者は当該財産に関してのみ執行する権利義務を有することになり、その他の相続財産に関しては執行する権利義務を有しません。
また、遺言により遺言執行者が指定されている場合は、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることは出来ません。
③ 認知
遺言者が、遺言により認知を行っていた場合は、遺言執行者は就任の日から10日以内に認知に関する遺言の謄本を添付して届出を行う必要があります。
④ 推定相続人の廃除
遺言者が、遺言により推定相続人を廃除する意思を示していた場合は、遺言執行者は、相続開始後遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に対し請求する必要があります。この場合において、推定相続人の廃除の効力は相続開始時に遡及して発生します。
⑤ 推定相続人の廃除の取消し
遺言者が、遺言により推定相続人の廃除を取消す意思を示していた場合は、遺言執行者は、相続開始後遅滞なく、その推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に対し請求する必要があります。この場合において、推定相続人の廃除の効力は相続開始時に遡及して発生します。
遺言者が、遺言により遺言執行者を数人指定していた場合は、その任務の執行は過半数で決定して行うことになりますが、遺言者が遺言により別の執行方法を示していた場合は、その内容に従うことになります。ただし、保存行為に関しては、各遺言執行者は単独で行うことが出来ます。
▽次回は、遺言執行者の就任、必要性に関することを記載したいと思います。