財産分与と贈与税、譲渡所得税、不動産取得税
財産分与は、夫婦の財産関係を清算するためや経済力の弱い一方の離婚後の生活を保障するために与えられている財産分与請求権に基づき給付を受けるものであり、贈与とはその性質が異なることから原則として贈与税は課されません。
ただし、財産分与の金額が婚姻中に夫婦で協力して築いてきた財産の金額及びその他の事情すべてを考慮したとしても多過ぎる場合は、当該超過した金額に対し贈与税が課されることになります。また、離婚が贈与税や相続税を免れるために形式的に行われたものである場合は、財産分与の金額すべてに贈与税が課されることになります。
贈与の場合は、個人間における贈与であれば贈与者に対する税金は発生しませんが、財産分与の場合は、不動産を財産分与の対象とした場合、分与をした者に対し不動産譲渡所得税が課されることになります。この場合は、時価で譲渡が行われたものとして譲渡所得の金額を算定することになります。
ただし、財産分与の対象がご自宅である場合は居住用財産の譲渡にかかる3,000万円の特別控除の特例を適用することが出来るため、ほとんどのケースにおいて不動産譲渡所得税は発生しないことになります。
この居住用財産の譲渡の特例は、夫婦間の譲渡には適用されませんが、財産分与を原因とする不動産の所有権移転登記の日付は、協議自体は離婚前に行ったものであったとしても離婚日以降となるため、夫婦間の譲渡とはならず適用されることになります。
財産分与により不動産を取得した場合、原則として不動産取得税が課されることになります。ただし、当該財産分与が慰謝料目的等ではなく清算的財産分与であると認められた場合は、不動産取得税は課されないことになります。
清算的財産分与と認められるためには、夫婦の婚姻中に協力して築いた財産である必要があるため、婚姻後に取得された不動産であり当該不動産の取得原因が贈与や相続等でない必要があります。
なお、清算的財産分与であると認められない場合でも、財産分与の対象の建物が昭和57年1月1日以降に建築されたものであり、住宅部分の床面積が50㎡以上240㎡以下で、分与を受けたものが居住を継続する場合は、既存住宅取得による軽減措置を受けることが出来ます。
財産分与により取得した不動産の名義変更を行うにあたっては、上記の他に固定資産税評価額の2%の金額が所有権移転登記の登録免許税として必要となります。
▽次回は、財産分与と詐害行為取消権に関することを記載したいと思います。