離婚の財産分与と詐害行為取消権
離婚に伴い行われる財産分与は、当事者の協議により決定することが出来るため、第三者を害することがない場合は、税務上の問題を除き当事者の意思により金額を決定することが出来ます。
しかし、その離婚が債権者からの強制執行を免れるために形式上離婚したのみであり、財産分与を利用して財産の保全を図ったものである場合は、詐害行為取消権により債権者に当該財産分与を取り消される可能性があります。
また、財産分与者が債務超過であるにも関わらず、民法第768条第3項の定めの趣旨に反して不相当に過大な財産分与を行い、財産分与を利用した財産処分であると認められるような特段の事情がある場合は、詐害行為取消権により債権者に当該財産分与を取り消されることになります。
なお、詐害行為取消権により財産分与が取り消される場合は、不相当に過大であると評価された部分のみが取り消されることになります。
そして、慰謝料に関しても慰謝料を利用した財産処分であると認められる場合は、同じく詐害行為取消権の対象となります。
参考として、以下に財産分与が詐害行為取消権の対象となる場合の最高裁判例の一部を記載します。
昭和58年12月19日最高裁判例 |
したがって、分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも考慮すべき右事情のひとつにほかならず、分与者が負担する債務額及びそれが共同財産の形成にどの程度寄与しているかどうかも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解すべきであるから、分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でなく、相手方は、右のような場合であってもなお、相当な財産分与を受けることを妨げられないものと解すべきである。 そうであるとするならば、分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえないものと解するのが相当である。」 |
▽次回は、孫への教育費の贈与 | 都度贈与と一括贈与に関することを記載したいと思います。