このような場合、相続放棄をすれば借金を返済する必要はなくなります。ただし、相続放棄をすればご自宅も手放さなければなりません。
私たちが関わらせて頂いた過去のご相続の中でもこのようなお悩みをお持ちの方がたくさんおられました。そして、総合的に考慮した結果、多くの場合は相続放棄を選択することとなりました。しかし、なかにはご自宅を手放さずに済んだ事例やご自宅を手放すことにはなりましたが、いくらかお金がお手元に残ることになった事例もあります。
これらの事例は、日頃の各専門家同士の情報交換により導きだすことが出来た結果です。一番望まれている結果にたどりつく事が出来るかはわかりませんが、私たちはご相談者様の個々のご事情に応じた最適の方法を導きだすことを日頃から心がけておりますので、まずはご相談頂ければと思います。
ご家族の方が、財産をほとんど残さず、借金を残してお亡くなりになられた場合、ご相続人様が借金を返していかなければならないのかと、ご不安に思われるかもしれません。しかし、相続放棄という手続きを行えば、借金を返済する必要はなくなります。ただし、お亡くなりになられた方が残された財産も取得することは出来なくなります。
そのため、お亡くなりになられた方の預貯金を引き出して使用してしまった場合、相続放棄をすることが出来なくなり、借金を返済しなければならなくなりますのでご注意ください。
もし、葬儀屋などに言われて預貯金を引き落としてしまった場合や葬儀費用に使用してしまった場合などはどうなるのか。その場合は、対処により相続放棄をすることが出来る可能性はありますが、個々のご事情によりますので、まずはご相談頂ければと思います。
なお、生命保険金や死亡退職金は、受取人が指定されている場合はその受取人様固有の財産となりますので、相続放棄をした場合でも取得することが出来ます。
また、たまにお聞きするのが借金は相続せずに、財産だけを相続したいというお話です。特に、ご自宅をお持ちの方ですとなおさらです。原則、借金を放棄する以上、財産だけ相続するということは出来ません。
しかし、法律にのっとったある方法を使用すれば、場合によっては、ご自宅などを取得出来る可能性はあります。また、ご自宅を手放すことになったとしても、結果、いくらかお金がお手元に残る可能性はあります。ただし、個々のご事情によりこの方法をとるメリットがあるのか否かなどを判断しなければなりません。
なお、下記事例のように、場合によっては、この方法を使用せずとも、財産を相続することが出来る可能性もありますので、まずはお気軽にご相談ください。
ちなみに、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申立てを行わなければなりません。もし、相続財産及び借金の調査中にこの期間を過ぎてしまう可能性がある場合は、事前に家庭裁判所に対して相続放棄の申述期間延長の申立てを行えば、期間延長をすることが出来ます。
ご家族の方が財産も借金も残してお亡くなりになられた場合、どちらのほうが多いのかわからず、遺産相続をしてよいのか相続放棄をしたほうがよいのか判断出来ない場合があります。
このような場合に、相続した借金は相続した財産の範囲内で弁済し、借金が相続財産を上回る場合は、ご相続人様ご自身の財産で弁済をする責任を負わないという方法をとることが出来ます。つまり、相続財産が借金を上回る場合は、借金を返済した後、残った財産は相続をすることが出来、ご相続人様固有の財産になるということです。この方法を限定承認といいます。
限定承認は、上記のような場合のほか、外国籍の方が財産をほとんど残さず、借金を残してお亡くなりになられて、その方の母国の相続法によれば、ご相続人様の範囲が広範囲に渡る場合など、その他個々のご事情により使用するメリットがある場合があります。
たとえば、日本国籍の方が借金を残してお亡くなりになられ、相続放棄をする場合は、お子様など先順位のご相続人様が相続放棄をした後、ご両親など次順位の相続権のある方たちも順に相続放棄をしていかなければなりません。
この場合、一番遠い親族関係で甥御様・姪御様まで相続放棄をしなければならない可能性がありますが、甥御様・姪御様までであればそれほど関係者が多くなる可能性は少ないです。ただし、ごくまれに関係者が2〜30人以上になる場合はあります。
これに対し、韓国籍の方がお亡くなりになられた場合、韓国法が適用されることになります。そして、韓国の相続法では、ご相続人様の範囲は4親等にまでおよびます。つまり、一番遠い親族関係でいとこ様まで相続放棄をしなければならなくなり、関係者の人数が相当数におよぶ可能性があります。
このため、1番はじめにご相続人様となられた方の時点で限定承認をすることにより、次順位以降の方を関与させずに済ませる場合があります。
ただし、限定承認は相続放棄と比べ、手続きが面倒で時間や費用を要するため、個々のご事情により限定承認を使用するか否かを判断していかなければなりません。大抵の場合は、相続放棄によることが多いですが、ご事情によっては限定承認のほうがよい場合もありますので、まずはご相談頂ければと思います。
ちなみに、限定承認も相続放棄と同じく自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申立てを行わなければなりません。そして、共同相続の場合は、日本国籍の方はご相続人様全員で共同して行わなければ限定承認をすることが出来ません。
この3ヶ月の期間は、一部のご相続人様が期間を経過していても、他のご相続人様について期間が満了していなければ、最後に期間の満了するご相続人様を基準に判断することが出来ます。韓国籍の方はご相続人様全員でなく、各ご相続人様単独ですることが出来ます。
また、日本国籍の方は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月を過ぎた場合でも相続放棄をすることが出来る可能性はありますが、韓国籍の方は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月を過ぎた場合、相続放棄をすることは出来なくなるため、限定承認をすることになります。
なお、限定承認をした場合、お亡くなりになられた方が財産をご相続発生時の時価でご相続人様に対し譲渡したとして、お亡くなりになられた方に対して、「みなし譲渡所得税」が発生する可能性があるなど、法務上及び税務上の問題を総合的に考慮して行う必要があるため、まずはご相談頂くことをおすすめします。