遺産分割調停・審判
前回の「遺産分割協議とは | 遺産分割協議書の作成」において記載したとおり、相続人間における遺産分割協議が整わなかった場合は、家庭裁判所における遺産分割調停または審判により遺産分割内容を定めることになります。
遺産分割調停とは、調停委員が第三者の立場として各相続人の意見を聞きながら、合意に向けて話し合いを進めていき、遺産分割をまとめていく制度となります。
遺産分割調停は、相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てを行います。
また、申立先は、相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者で合意した家庭裁判所となります。
そして、合意に至らずに遺産分割調停が不成立になった場合は、自動的に審判手続に移行し、遺産分割審判が開始されることになります。
遺産分割審判は、調停とは異なり話し合いではなく、家庭裁判所の裁判官が相続財産または権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して、審判を下すことになります。
この審判の結果に不服がある場合は、審判を受けてから2週間以内に審判を行った家庭裁判所に対し即時抗告を行うことが出来、高等裁判所において抗告審が行われることになります。
即時抗告を行わなかった場合は、審判が確定し、審判の内容どおりに各相続人が相続財産を取得することになります。
なお、遺産分割審判の申立先は、調停と異なり被相続人の住所地または相続開始地の家庭裁判所となります。ただし、調停の不成立により移行した審判手続きは、調停手続きを行っていた家庭裁判所において開始されることが一般的です。
また、遺産分割調停と審判はどちらを申立ててもよいですが、審判から申立てを行った場合、家庭裁判所の職権により調停に回される可能性が高いです。
ちなみに、遺産分割審判の結果下される審判内容は、多くの場合において法定相続分どおりの内容となることが多いです。
そのため、よっぽど法定相続分どおりでない結論が出る理由及びその証拠がある場合を除き、出来れば相続人同士の話し合いにより遺産分割協議を行い、合意に至るようにお互い譲歩することが、一番よい結果につながるのではないかと思います。
ただし、遺産分割協議を行うにあたっての前提である相続財産の範囲が確定しておらず、その内容に争いがある場合は、遺産分割調停または審判の申立てを行う前に民事裁判である遺産確認の訴えを起こす必要があります。また、内容によっては不当利得返還請求訴訟により自身の法定相続分相当額を相手方に請求する必要があります。
▽次回は、遺産確認の訴え及び不当利得返還請求訴訟に関することを記載したいと思います。