遺産分割協議の取消し・解除
遺産分割協議は、通常の契約と同じく、詐欺・強迫を理由に取り消すことが出来ます。また、以下の要件に該当する場合は成立した遺産分割協議は無効となります。
・錯誤
・相続人全員で行われていない場合
・相続人でない者を加えてなされた場合
・重要な相続財産が漏れてなされた場合
・遺産分割協議後に遺言書が発見された場合
遺産分割協議は詐害行為取消権の対象となります。そのため、遺産分割協議を行った結果、ある相続人に対して債権を有している者の権利が侵害される場合は、当該債権者により遺産分割協議を取り消される可能性があります。
これは、遺産分割協議は、相続が開始されたことにより相続人の共有となった相続財産について、相続人間の話し合いにより新たに相続財産の帰属を確定させるものであり、この性質上、財産権を目的とする法律行為であると認められるためです。
これに対し、相続放棄は詐害行為取消権の対象となりません。これは、相続放棄は身分行為であるため、民法第424条に定められている詐害行為取消権の要件に当てはまらないためです。
■民法条文
第424条(詐害行為取消権)
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。
一旦成立した遺産分割協議の全部または一部を、相続人全員の合意より解除したうえで、再度遺産分割協議を行うことは可能です。
しかし、税務上は、この合意解除及び再分割という行為は、一旦遺産分割協議により所有者が確定された財産を、当事者の合意により新たに所有権を移転させる行為であり、当該行為を贈与契約であると判断し、贈与税が課される可能性が高いです。
遺産分割協議において、特定の相続人がある行為を行うこと(債務)を条件として、協議内容どおりの財産を取得するという定め方がされる場合があります。
この債務が発生する場合は、親を扶養するというような内容を定めた場合や、特定の財産を取得する代わりに他の相続人に対し金銭を支払うといった代償分割を行った場合などがあります。
この場合において、当該債務を負った相続人が債務を履行しなかった場合に遺産分割協議自体を解除出来るのかという問題があります。しかし、この債務不履行による解除は認められておりません。
これは、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了しており、その後においては、債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人との間の債権債務関係となり当該相続人間において解決すべきであるためです。
このように解さなければ、再度遺産分割を行った結果、民法第909条の定めにより相続開始の時にまで遺産分割の効力が遡り、法的安定性が著しく害される結果となるためです。
▽次回は、相続分の譲渡に関することを記載したいと思います。