相続分の譲渡
相続分の譲渡とは、法定相続人が自身の法定相続分の全部または一部を他の法定相続人または法定相続人以外の第三者に譲渡することをいいます。また、相続分の譲渡は包括受遺者も行うことが出来ます。
相続分の譲渡は、遺産分割協議が成立する前に行う必要があり、譲渡の対象となるのは、相続財産の共有持分ではなく、相続により財産を取得する権利そのものとなります。
相続分の譲渡の方法には、譲受人から金銭などの対価を受け取る有償による方法(売買)と、一切対価を受け取らない無償による方法(贈与)とがあります。
相続分の譲渡を使用する場合としては、相続人間の遺産分割協議がなかなかまとまらない等、相続人間の争いからいち早く抜け出したい場合等に、他の相続人に対して譲渡を行う場合がほとんどであると思います。
この場合においての相続分の譲渡方法としては、自身の法定相続分を特定の相続人1人に無償で贈与したり、ある程度の金額で特定の相続人1人が相続分の買い取りを行ったりする場合等があります。
また、相続財産を取得する気はないが、特定の相続人1人に対して相続分の譲渡を行った場合、その事でなにか言われる可能性があるのが嫌である場合は、相続分のないことの証明書を使用する場合もあります。
そして、第三者に対して相続分の譲渡が行われた場合は、当該第三者を含めて遺産分割協議を行う必要があります。
ただし、第三者に対して相続分が譲渡された場合は、他の相続人はその価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることが出来るとされており、この権利は1ヶ月以内に行わなければならないと定められています。
なお、相続人間において相続分の譲渡が行われた場合は、有償・無償に関わらず譲渡所得税や贈与税が発生することはなく、すべて相続税の範囲内において処理されることになります。
これに対し、第三者に相続分を譲渡した場合は、当該第三者は相続税の課税対象者とはならないため、有償の場合は譲渡人である相続人に対して相続税及び譲渡所得税が課されることになります。また、無償の場合は譲渡人である相続人に対して相続税が課され、譲受人に対して贈与税が課されることになります。
▽次回は、寄与分に関することを記載したいと思います。