遺贈の承認と放棄
遺言の効力は、遺言者の相続開始と同時に発生するため、受遺者の合意を必要とせずに遺贈は成立することになります。
そのため、受遺者が当該財産を受け取る気がない場合に放棄が出来るように、遺贈の放棄が民法第986条に定められており、特定遺贈に関しては、遺言者の死亡後、いつでも遺贈を放棄することが出来ます。
これに対し、包括遺贈の放棄は、民法第990条に、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有すると定められているため、相続人と同じく相続放棄の定めに従うことになり、自身のために包括遺贈があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して包括遺贈の放棄の申述を行わなければなりません。
また、受遺者が遺贈の承認または放棄をしないで亡くなった場合は、受遺者の相続人は自身の相続権の範囲内で当該遺贈の承認または放棄をすることが出来ます。
なお、遺贈の承認及び放棄は、撤回することは出来ませんが、錯誤による無効や詐欺・強迫による取り消し等の主張を行うことは出来ます。
特定遺贈の場合は、受遺者がいつでも遺贈を放棄することが出来るため、法律関係がいつまでも確定しないことになります。
そのため、民法第987条の定めにより、相続人や遺言執行者等の遺贈を履行する義務を負う者及びその他の利害関係人は、受遺者に対し相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨の催告をすることが出来ます。
そして、この場合において、受遺者が当該期間内に遺贈を履行する義務を負う者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなすことが出来ます。
なお、遺贈の効力が発生しなかった場合や放棄により遺贈が効力を失った場合は、受遺者が受け取る予定であった財産は相続人に帰属することになります。
▽次回は、負担付遺贈 | 相続財産に属しない財産の遺贈に関することを記載したいと思います。