尊厳死宣言公正証書
尊厳死とは、回復の見込みのない末期症状に至ったときに、患者自身の意思により、ただ死期を引き延ばすだけの延命措置は行わず、痛みを和らげる処置のみを受けながら、人間としての尊厳を保ち、自然に死を迎えることをいいます。
これに対し、安楽死は、回復の見込みのない末期症状に至ったときに、患者自身の意思により、苦痛から逃れるために医師が積極的な医療行為により患者を早く死なせることであり認められていません。
もし、積極的な安楽死を行った場合は、その医師は患者の自殺を幇助したとして、刑法上の殺人罪に問われる可能性があります。
そのため、尊厳死を求める場合は、自身の意思がはっきりしている段階において、しっかりとした書面で意思表示を行っておく必要があります。
そして、医師に尊厳死を実現して頂くためには、本当に患者自身の意思により作成された書面であることを確認出来る必要があるため、私文書ではなく公正証書により作成しておいたほうがよいと思います。
この公正証書のことを「尊厳死宣言公正証書」といい、後記文例のような文書が作成されることになります。また、「尊厳死宣言公正証書」は遺言とは異なるものであるため、遺言書も合わせて作成する場合は、別途公正証書遺言を作成することになります。
なお、「尊厳死宣言公正証書」を作成した場合でも、尊厳死は法律に定められているものではなく法的な効力はないため、医師が必ず従わなければならないものではなく、ただ死期を引き延ばすだけの延命措置に当たるか否かは、医学的判断によるものであることから、患者が望むとおりの尊厳死が実現しない可能性もあります。
ちなみに、日本尊厳死協会のアンケート結果によると、同協会が登録・保管している「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は、平成15年で95.9パーセント、平成16年で95.8パーセントであることから、尊厳死を容認している医師は多いといえます。
尊厳死宣言公正証書文例 ※日本公証人連合会ホームページより |
第1条 第2条 第3条 第4条 |
▽次回は、贈与契約に関することを記載したいと思います。